最近読んだ本
毎年ながら春休みは読書が止まらなくなってしまう。レポートも試験も無いし、小説の世界にどっぷり浸かっていたい…。
主要人物はアルビノの美少女と、少女を執拗に追い求める私(ストーカーどころではない)と、少女を「私」から引き離す長官。あとは無慈悲に人々を凍えさせる氷。
この世の終わりに少女を追い求めるっていう設定が既に萌える感じだが、文章がキレッキレで美しくてうっとり。
少女に対して絶対的権威をみせつける「私」と長官、氷の追いやる理不尽な現実……何重にもわたる不条理な構造で出来ている世界観は、なんだかカフカっぽいな〜と思っていたらカヴァンはカフカから影響も受けていた模様。こういうSF好きだ!
カヴァン連続読み。「氷」よりも陰鬱で時に激しい叱責を伴う荒々しい文章にビビった。カヴァン自身が幼い頃のネグレクトや結婚後のヘロイン常用、など精神的にあやうい部分がありすぎて、自分を客観視するために小説として「表現」する手段を選んだ、という…壮絶だった…。(短編ごとに異なるけれど)主人公とカヴァン自身が投影されているかのようで読んでいて苦しかった。
芥川や太宰がそうであったようにみずから命を絶ったひとの文章は力強くて惹きつけられるものがあるような(一括りにするのもどうかと思いますが)。カヴァンの作品にも出会えてよかった。
芥川賞の作品が最高だったのでこちらも読了。
小野正嗣の文章って読むのに体力がいるなぁと実感。隠喩がいっぱいで美しいんだけど全体的にどんよりしている感じ…。
「浦」という救いようのない地方の町が舞台になっていて、救いようのない気分になるのだが、それでもやっぱりそこには愛すべき人がいて、愛すべき町である、という温かい眼差し。
私は首都圏のそこそこ都会で育った身だが、祖父母の家へ帰ると「郷愁」じゃない「哀しさ」や「侘しさ」みたいなものが漂っているのが一番印象的なんだよなぁ…。
登場人物が語り出す「浦」にまつわるお話には戦時中の韓国兵の話や珪肺で国から補助金をもらう話、何年も前の虐待とも言える教育の話など、生々しいものがいっぱい。だけど不思議な力が宿っている作品だった。
新譜といえばスフィアンとデスキャブのCDが待ち遠しい。どちらも現代のアメリカを象徴しているようなアルバム…の噂ですが私にとって心の底から共感できるのは小野正嗣の小説のような世界観だったりするのかなぁ、と考えてみたり…。